働き方改革や生産性を高めることを目的として、国を挙げてDX化が推進されています。しかし、DX化と聞いても、いまいちイメージしにくい方も多いのではないでしょうか。
本記事では、DXとはなにか、DXを導入することで、企業がどのような効果を得られるのかを解説します。実際にビジネス現場で取り入れられている採用事例も紹介しているので、DX投資への参考にしてみてください。
DX(Digital Transformation)とは
DXとは、Digital Transformation(デジタルトランスフォーメション)の頭文字を取った言葉で、デジタルデバイスやITツールを活用したビジネスモデルの変革です。もともとは、2004年のスウェーデンのウメオ大学のエリック教授が、「ITの浸透によって人々の生活がより良い形に変化する」と提唱したのが始まりとされています。
近年、DXは、働き方改革や業務環境の効率を目的として、日本でも注目されるようになりました。2020年、一般社団法人日本能率協会が発表した「日本企業の経営課題2020 調査結果」によると、大企業では80%以上、中小企業でも50%以上がDXに取り組み始めているとの回答が出ています。感染症対策にもテレワークが導入されるようになり、日本全体でDX化への意識が高まっているのが現状です。
DX導入による効果
それでは、DX導入によって、具体的にどのような効果が出るのでしょうか。企業でDX化を進めることによる効果を3つ解説します。
業務のデジタル化による業務効率の向上
DX化を行うことで業務効率の向上が可能となります。これまで、手入力で行っていた作業や、紙媒体を使っていた業務のデジタル化を進め、従業員の負担を抑えられるようになります。
DX導入による業務効率向上の例として、取引先との契約締結工程を簡素化が挙げられます。従来の方法では、印鑑やサインによる本人確認を行っていたため、印刷・上司への回付・郵送といった手間が必要となるだけでなく、紙代、印刷代、印紙代といったコストもかかってしました。
一方で、DX化を進め、電子署名を導入すると、紙媒体ではなく電子上で契約書を発行し、担当者のサインや、取引先への送付をまとめて行えるようになります。契約に関する業務の負担を大幅に軽減し、ほかの重点的な業務に取り組む時間を作り出せます。
マーケティングオートメーションツールによる売上の改善
消費者のニーズや行動が大きく変化するなかで、データが重要視される時代となりました。そこで、マーケティング面においても、DXの導入によって効率化、的確な顧客へのアプローチによって業績アップを期待することができます。
たとえば、マーケティングオートメーションツールを導入することで、自社製品・サービスに対する消費者の興味・関心を調べられるほか、ターゲットに対してメールマーケティングやデジタル広告配信などを行い、見込み顧客の育成が可能です。従来のダイレクトメールや電話営業といった従来のマーケティング方法を見直し、売り上げ改善につなげられます。
”2025年の崖”問題の対策
経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」によると、将来的にDX導入が実現されないことで、2025年以降年間最大12兆円と経済損失が生じる可能性あると報告しました。「2025年の崖」とも呼ばれており、各企業でのDX化が急務となっています。
2025年の崖が生じる理由は、ITシステムの老朽化や、システムの肥大化、IT人材不足などさまざまな原因が挙げられます。市場の変化に対応できなくなったり、ビジネスモデルに柔軟性を持てなかったりし、世界中の企業を相手にしたデジタル競争に追いつけなくなり、経営面に大きな影響を与える可能性があります。
2025年の壁を解決するためには、それぞれの企業がDX化に対して真剣に向き合い、DX導入を進めることが大切です。自社の経営状況を改善させるだけでなく、日本経済の利益になるためにも、DX化が必要とされています。
出典:経済産業省 DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~
大企業でも進むDX採用の最新事例
DX化を自社で推進する際には、実際に導入している企業の事例をチェックしましょう。各社において、どのようにDXを活用しているのかを解説します。
大和ハウス工業株式会社
大和ハウス工業株式会社は、施行現場におけるDX化に取り組んでいる企業です。建設業界では、少子高齢化による人手不足が顕著となっており、現場従業員の負担や離職率増加が課題とされています。
そこで、大和ハウス工業では、施工現場にロボットを導入し、少ない人数でも対応可能な新工程を取り入れています。また、デジタルデータを活用した業務効率や安全性を高めるテストの実施に加え、施工現場の遠隔管理などのDX化を進めています。
出典:大和ハウス工業とNEC、施工現場のデジタル化で協業、現場遠隔管理の実証実験を開始
株式会社ゆうちょ銀行
株式会社ゆうちょ銀行では、AIによる機械学習を事務システムに導入し、文字の認識率を高めています。従来使用していたAI非搭載のOCRは、数千種類に及ぶ帳票を読み取るのに時間がかかるほか、精度に課題を抱えていました。
そこで、機械学習を可能としたOCRを導入し、帳票の手書き文字を学習させる技術を取り入れました。結果として、読み取り精度を向上したことで、業務効率の改善に成功しています。
出典:NEC、ゆうちょ銀行にAIを活用したOCRを提供し、帳票処理業務を従来比約60%効率化
日本交通株式会社
日本交通株式会社の導入事例は、顧客の利便性を高めるためのDX化です。過去の乗車歴や、イベントによる人が密集しやすいエリアをAIが分析し、需要が高い場所にタクシーを配車するシステムを取り入れることで、乗客を待たせる時間を減少させています。
また、QRコードを用いた独自の支払いサービスの導入によって、目的地に到着する前に料金の精算を可能としました。競合他社が多いタクシー業界において、顧客満足度を高める新たなビジネスモデルとして注目されています。
出典:(4) JapanTaxi(日本交通):日本のタクシー業界をITの力で効率化
まとめ
DX化は、業務効率の向上や、新たなビジネスモデルを創造するために欠かせない施策です。グローバル化に伴い、より一層競争力が必要とされる現代において、各企業が向き合う必要があります。
そこで、DX化成功している企業の導入事例を参考にし、自社でのDX化に取り組んでみましょう。DX導入による効果を高めるためにも、どのような課題を抱えているかを整理し、状況に応じてデジタルツールやソフトウェアなどを取り入れる必要があります。